側弯症とは

側弯症とは一口に言うならば、「正面像で脊柱が側方へ弯曲した状態」となります。
病気を理解するために、まず側弯症に大きく関わる、脊柱を中心とした人間の骨格について以下にまとめてみます。

脊柱は身体の支柱となる骨「脊椎」とその内部にある神経組織から成り立ちます。
横から見ると、緩やかなS字のカーブを描いています。

 脊椎は32〜34個の椎骨が積み重なって構成され、
椎骨の一部分である椎体と椎体の間には
軟骨組織でできた椎間板が挟まっており、
クッションのような役目をしています。
そのため脊柱は丈夫なバネのような特性があり、
人間の体重を支え、そして伸縮性に富んで曲げたりねじったりという動きが可能になります。

椎骨は、7個の頸椎、12個の胸椎、と、一般的には
5個の腰椎、5個の仙椎、3〜5個の尾椎に分類され、
仙椎と尾椎はそれぞれに癒合して仙骨、尾骨と呼ばれます。仙骨・尾骨は骨盤を作るパーツでもあります。
また胸椎には、肋骨窩という肋骨に接するくぼみがあります。

 椎骨には椎孔という穴があり、椎孔は連なって脊柱管となって、中を脊髄神経が下行しています。

脊柱が側弯すると、自然と周囲にある肋骨・肩甲骨、骨盤へも影響してきます。
そのため側弯が進むと、前屈みになったときに肋骨・肩甲骨が隆起したり、
骨盤のあたりの腰部の隆起が見られ、病気に気づくきっかけにもなります。
直立の姿勢では、片側の肩だけが上がった状態になり、
またウエストラインが左右不均衡になります。(下の図を参照)

This pictures were borrowed from
Scoliosis-MEDKAAU (http://medkaau.com/vb/showthread.php?t=7207)

次に側弯症の説明です。

  側弯症は特徴から大まかに2つに分類されます。

 機能性側弯症

  椎体の変形やねじれ(回旋)のない一過性のもの。
  原因としては日常生活における姿勢の悪さ(猫背や片側にばかり荷物を持つなど)の他、
  外傷等によって骨盤がずれたことによっておこるものなどがあり、
  いずれにしても原因を取り除くことで改善されます。


 構築性側弯症

  椎体の変形とねじれ(回旋)を伴うもの。
  脊柱の弯曲は2次元(身体の左右)のみならず、脊椎が3次元でねじれるため、
  臓器への影響、特に心肺機能障害を起こす危険性があります。

   変形のパターンには、胸椎を中心に曲がる胸椎カーブ、腰椎を中心に曲がる腰椎カーブ、
  胸椎と腰椎の間で曲がる胸腰椎カーブがあります。


 構築性側弯症は、さらに以下の3つに分類されます。

 1.特発性側弯症

     構築性側弯症のだいたい70%にあたります。
    発症年齢によって、乳幼児側弯症、若年性側弯症、思春期側弯症に分けられ、
    思春期側弯症が最も多く、女子に多い。

     原因は性ホルモンの関連説や筋力不均衡説など諸説ありますが、
    結局のところ不明とされています。そのため治療も、進行を防ぐための運動療法、
    装具療法と、弯曲の強い場合や急激な進行が予測される場合には
    外科的手術が行われます。

     側弯の進行度合いや心肺機能への影響など、患者個々の状況に応じて
    考慮されますが、手術適応は胸椎で50〜55度以上、
    胸椎と腰椎の移行部と腰椎で40度以上。肋骨隆起のある場合も手術適応。

 2.先天性側弯症

   
構築性側弯症の10〜20%とされています。
   生まれつきの脊椎奇形による側弯で、半椎体と呼ばれる椎骨奇形や椎骨同士の癒合、
   肋骨との癒合、また奇形骨もひとつだけでなく複数ある場合など、
   患者によって症例は多様。
   半椎体の多くは胸椎よりも腰椎にあることが多いと言われています。
   特発性側弯症のように脊柱が左右に弯曲するだけでなく、
   後の方へ曲がる後弯変形や前に曲がる前弯変形を起こすこともあります。
   脊椎奇形は胎児期に起こっているためか、先天性心疾患を併発しているケース、
   手指奇形を併発しているケースの報告も多くあります。

 3.症侯性側弯症

   
脊椎以外の病気(マルファン症候群、レックリングハウゼン病など)
    にともなったもの。一部遺伝が認められます。


  左・中央の2枚が先天性側弯症のレントゲン写真。赤枠内にあるのが奇形骨です。
 右が特発性側弯症のレントゲン写真です。

  側弯症の進行を示すには、側弯のカーブの大きさである、「コブ角」という角度で表します。
 目的とするカーブの椎体が一番傾いている椎体と椎体の間の角度を測定します。


 側弯症の治療


 ・装具療法
   
側弯症の装具療法に用いられる装具には、
   胸椎・腰椎の変形を制御する「TLSO装具」(アンダーアーム、ボストンブレース)と、
   頸椎・胸椎・腰椎の変形を制御する「CTLSO装具」(ミルウォーキーブレース)
   があります。
   いずれも成長完了まで装具を用いられます。
   医師の見解によって、24時間入浴時以外は装着するように指導される場合、
   就寝時のみ装着とされる場合があります。

    患者の身体に合わせて作られますが、身体に硬い装具をつけるのは心理的な負担が
   大きく、また、装具療法の効果が現れない場合もあります。


 ・手術

    側弯症は、多くは成長途中の子どもの患者が多く、手術においては
   成長期の終わった時点で行う脊柱固定術のほか、
   成長に合わせて器具の伸張を何度も繰り返す手術法(グローイングロッド法、ベプター法)
   があります。
   成長に合わせて器具の伸張を行う手術法は成長過程で有効ですが、
   成長完了時には脊柱固定術を改めて行うことになります。

   先天性側弯症では、奇形骨や骨癒合を伴っていること、
   脊柱管(神経の通り道)近くを操作することもあり、
   手術手技が患者個々に応じて複雑になるため、手術が行える医師は限られています。


 記事内の画像は、「DesignOffice アイリス・アイリス」さま、「Scoliosis-MEDKAAU 」さま、
 「step by step 側弯症ライブラリー」さまより提供していただきました。

 記事の編集におきましては、「脊椎側弯症患者の集い 側弯ひろば」さまのサイトを
 参考にさせていただきました。

 また参考文献は、「系統看護学講座 人体の機能と構造(1) 解剖生理学」:医学書院、
 「看護師・看護学生のためのレビューブック」:MEDIC MEDIA   です。